2019年1月より、この「天下の小論」は、私の乗馬に関するブログである「還暦からの乗馬日誌」と統合させ、「馬に乗ったり本を読んだり」というブログ名で活動致します。 www.quest-corporation.co.jp 引き続き、宜しくお願いします。 2019年1月14日 西森憲司…
アメとムチという言葉は、嫌う人もいる。 しかし、人を動かす上で有効な手段である。 この、アメとムチをどうふるうか、その基本の考え方が『荀子』にある。 賞は過分であってはいけない。 また、刑は過重であってはいけない。 賞が過分だと、本来功績が無い…
立派な上司というものは、部下に全てを求めない。 人格、能力、技術、知識、自分自身がそれら全てを備えていたとしても、部下に同じことを求めようとはしない。 ところが、実際は、部下の無能、無気力、節度の無さを嘆く上司は多い。 しかし、考えてみれば、…
中国に仏教が伝来したのは、後漢の時代だといわれている。 そして、戦乱の多かった魏晋南北朝時代に、救済を求める人々の心を捉え、大いに広まったという。 粱の武帝は、何度も寺に奴隷として仕え、皇帝を買い戻すために、国は多額の寄進を行なった、とされ…
おいしい話というものは、そうそう世の中にあるものではない。 何もせず、楽して儲けるなんてことが、出来る筈もない。 これは、子供でも分かる。 ところが、70歳の年寄りが簡単に騙されたりする。 詐欺は、もちろん詐欺する方が悪い。 しかし、騙される方の…
孔子が太山(泰山)に行った時のことである。 栄啓期(えいけいき)という人が、郕(せい)という魯の町の野で、貧しい身なりで琴を弾いて、楽しそうに歌を歌っていた。 奇異に感じた孔子は、尋ねた。 「あなたの楽しみは何ですか」、と。 栄啓期が答えるに…
居酒屋などで、中年のサラリーマンが若い社員を相手に、こんなことを言ったりする。 「どうも俺はうまく立ち回れないタイプだから・・・」 とか、 「間違ったことは、上に対してもはっきり言ってしまう性分だから駄目なんだな」 ドラマなどでは、悪人がどん…
西晋の初代皇帝で、呉を滅ぼして三国志の時代を終わらせた武帝(司馬炎:諸葛亮孔明との戦いで有名な司馬懿仲達の孫)は、竹林の七賢の一人である山濤(さんとう)を重用していた。 しかし、重用している割には、与えている禄、つまり給料は少なかったという…
陳の国の轅頗(えんぱ)という人は、国人に税を割り付け、陳の公女の結婚資金にした。 そこまでは良かったのだろうが、その金が余ったので、自分用に大きな銅器を作ってしまった。 国人は、この横領を憎み、轅頗を追放した。 取るものも取り敢えずに逃げる途…
子供の頃、大人ってものは賢いもんだと思っていた。 きっと、自分も大人になれば、少しは賢くなるだろうと、思っていた。 もちろん、大人になっても賢くはなれなかったが、きっともっと年をとれば、年寄りになれば賢い人になれるんじゃないかと、信じた。 し…
記事の題名の言葉は、いつ頃からか、よく聞くようになった言葉である。 素晴らしい名言だという人が多いようだが、私は好きになれない。 極めて傲慢な匂いがする。 「人に乗り越えられない試練は無いんだ、人間は何でも出来るんだ」 とんでもない話である。 …
何有以財物令人慙者 いずくんぞ、財物をもって人をして慙(はず)かしめることあらんや 司馬徽(しばき)の逸話である。 司馬徽は、三国志の中で、劉備に孔明を推薦することで有名な人で、水鏡先生と呼ばれている。 何を言われても「好(よし)」と答えた、…
楊朱の弟である楊布が、白い着物を着て出かけた。 雨が降ってきたので、白い着物を黒い着物に着替えて、家に帰って来た。 家の犬は、白かった筈の飼い主が黒くなって帰ってきたので、怪しんで吠えかかった。 楊布は怒って、犬を叩こうとすると、兄の楊朱が、…
英語でいえば、コストパフォーマンスである。 投入した資源に対して、どれだけ成果をあげることができるのか、ということである。 10人で100の仕事をしていた場合、100が150になっても、8人で100の仕事ができるようになっても、生産性は向上…
マキアヴェッリだっただろうか・・・。 臣下が「あなたのためには命を捧げます」という時は、命の危険にさらされていない場合である、と書いたのは。 ビジネスの世界でも、 「あなたに付いていきます」という言い方がある。 僕も、何度か言われたことがある…
優れたリーダーは、メンバーをモチベートし、同じ方向へと導く。 しかし、そのようなリーダーは滅多にいないし、また、滅多になれるものでもない。 「上司留守、明るい職場で絶好調」というサラリーマン川柳があるように、現実に多いのは、メンバーのやる気…
ある時、「大阪人はケチだ」と言った人がいた。 そうすると、そこにいた一人が、「そんなことはない。東京の人間だってケチだ」と言い返したことがあった。 これは反論にはならない。 反論したいのであれば、大阪人がケチではない証拠を挙げるべきであり、東…
ざくっとした感覚ではあるが、西洋でも東洋でも、古代の方が合理的である。 近世、近代になるにつれ、人間は非合理になっていくような気がする。 古代の人である孔子は、「風水」などといった妖しげなことは、言わない。 東に建て増そうが、西に増築しようが…
一時期、フランスの経済学者トマ・ピケティ博士の著書『21世紀の資本』が評判であった。 題名からして、なかなかに挑戦的である。 カール・マルクスの有名な『資本論』は、原題をそのまま訳すと『資本』である。 ピケティ博士は、マルクス向こうを張った題名…
経営者は、三つのことをしっかりと視ておかなければならない、という。 一つは、地位の高い者が、その地位にふさわしい徳(人間性)を持っているのか。 二つは、業績を挙げた人間に、その業績にふさわしい報酬を与えているのか。 三つは、能力や適性に見合っ…
好きな話の一つである。 玉を細工して、楮(こうぞ)の葉を作る人がいた。 三年を費やして完成すると、細かな毛や微妙な形まで本物そっくりで、実際の楮の葉の中に混じると、見分けがつかなかった、という。 この人は、ついにその匠の技で、宋の国に雇用され…
こんな会社は辞めてやる、誰でも、一度や二度は考えたことがあるだろう。 そして、実際に辞める人、辞めない人がいる。 辞めて成功した人もいれば、失敗した人もいるし、辞めずにうまくいった人もいかなかった人もいるだろう。 柳下恵(りゅうかけい)という…
論語の冒頭は、 「学びて時にこれを習う、またよろこばしからずや。朋(とも)あり、遠方より来る、また楽しからずや」 と、実に淡々と始まる。 これに比べると、『孟子』の冒頭は劇的である。 それは、梁の恵王という君主との謁見から始まる。 恵王は、孟子…
若いころは大きな家が欲しいと思っていた。 住宅展示場で見る広いリビングには随分と憧れたものである。 そして、それなりの家にも住んできたが、最近では家は小さい方がいいなと思うようになった。 その理由の一つとして、数年ほど前に、上野の東京国立博物…
韓非子とマキアヴェッリは、よく似ている。 社会が乱れ、裏切りや陰謀が渦巻くようになると、こういった考え方をせざるを得ないのだろう。 韓非子は言う。 君主は、人を信じてはならない、と。信じることが、身を滅ぼす原因となる。 人を信じれば、人によっ…
当意即妙の受け応えが素晴らしい話である。 魏の文侯が家臣たちと歓談していた時、 「ところで、私は君主としてどうだろう?」 と尋ねた。 あまり良い質問とはいえない。 真の明君ならこんなことは訊ねないだろう。 家臣たちは、本心は別として、次々と、 「…
全ての生き物は、コストと収益のバランスの上に成り立っている。 コスト以上の収益が得られなければ、生き物は死滅するしかない。企業でいえば、潰れるしかない。 このコストと収益を組み合わせることによって、三つの方策が考えられる。 一つは、どれだけコ…
鰥夫(おとこやもめ)、寡婦(やもめ)、独者(ひとりもの)、孤児(みなしご)、という4者は、支えてくれない家族を持たない人たちである。 彼らを助けるのが政治だと、孟子は言う。 古代の聖王である文王は、必ず彼らのことを優先したというのである。 今…
臣父淸畏人知、臣淸畏人不知(徳行 世説新語) 臣の父の清は、人に知られることを畏れ、臣の清は、人に知られざることを畏る。 本当の聖人であれば、人の評価などは気にしないであろう。 しかし、普通の人間は、そうではない。 やはり、尊敬されたり、信頼さ…
「情けは人のためならず」という言葉があるように、最終的には自分の利益が大切である。 利益が目的であり、人に敬意を払ったり親切にしたりすることは、手段かもしれない。 しかし、手段は大切である。 手段を間違うと、結局、利益を手にすることはできない…