天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『荀子』 アメとムチ

アメとムチという言葉は、嫌う人もいる。 しかし、人を動かす上で有効な手段である。 この、アメとムチをどうふるうか、その基本の考え方が『荀子』にある。 賞は過分であってはいけない。 また、刑は過重であってはいけない。 賞が過分だと、本来功績が無い…

『淮南子』 理想の上司とは

立派な上司というものは、部下に全てを求めない。 人格、能力、技術、知識、自分自身がそれら全てを備えていたとしても、部下に同じことを求めようとはしない。 ところが、実際は、部下の無能、無気力、節度の無さを嘆く上司は多い。 しかし、考えてみれば、…

『世説新語』 宇宙より大きな志

中国に仏教が伝来したのは、後漢の時代だといわれている。 そして、戦乱の多かった魏晋南北朝時代に、救済を求める人々の心を捉え、大いに広まったという。 粱の武帝は、何度も寺に奴隷として仕え、皇帝を買い戻すために、国は多額の寄進を行なった、とされ…

『世説新語』 おいしい話

おいしい話というものは、そうそう世の中にあるものではない。 何もせず、楽して儲けるなんてことが、出来る筈もない。 これは、子供でも分かる。 ところが、70歳の年寄りが簡単に騙されたりする。 詐欺は、もちろん詐欺する方が悪い。 しかし、騙される方の…

『孔子家語』 貧は士の常なり

孔子が太山(泰山)に行った時のことである。 栄啓期(えいけいき)という人が、郕(せい)という魯の町の野で、貧しい身なりで琴を弾いて、楽しそうに歌を歌っていた。 奇異に感じた孔子は、尋ねた。 「あなたの楽しみは何ですか」、と。 栄啓期が答えるに…

『孟子』最後に善は勝つ?!

居酒屋などで、中年のサラリーマンが若い社員を相手に、こんなことを言ったりする。 「どうも俺はうまく立ち回れないタイプだから・・・」 とか、 「間違ったことは、上に対してもはっきり言ってしまう性分だから駄目なんだな」 ドラマなどでは、悪人がどん…

『世説新語』 給料が少なかった人の話

西晋の初代皇帝で、呉を滅ぼして三国志の時代を終わらせた武帝(司馬炎:諸葛亮孔明との戦いで有名な司馬懿仲達の孫)は、竹林の七賢の一人である山濤(さんとう)を重用していた。 しかし、重用している割には、与えている禄、つまり給料は少なかったという…

『春秋左氏伝』 物言えば唇寒し

陳の国の轅頗(えんぱ)という人は、国人に税を割り付け、陳の公女の結婚資金にした。 そこまでは良かったのだろうが、その金が余ったので、自分用に大きな銅器を作ってしまった。 国人は、この横領を憎み、轅頗を追放した。 取るものも取り敢えずに逃げる途…

『春秋左氏伝』 なかなか賢い人にはなれません

子供の頃、大人ってものは賢いもんだと思っていた。 きっと、自分も大人になれば、少しは賢くなるだろうと、思っていた。 もちろん、大人になっても賢くはなれなかったが、きっともっと年をとれば、年寄りになれば賢い人になれるんじゃないかと、信じた。 し…

『論語』 神は乗り越えられる試練しか与えない?

記事の題名の言葉は、いつ頃からか、よく聞くようになった言葉である。 素晴らしい名言だという人が多いようだが、私は好きになれない。 極めて傲慢な匂いがする。 「人に乗り越えられない試練は無いんだ、人間は何でも出来るんだ」 とんでもない話である。 …

『世説新語』 財物は人のためにある

何有以財物令人慙者 いずくんぞ、財物をもって人をして慙(はず)かしめることあらんや 司馬徽(しばき)の逸話である。 司馬徽は、三国志の中で、劉備に孔明を推薦することで有名な人で、水鏡先生と呼ばれている。 何を言われても「好(よし)」と答えた、…

『列子』 狗吠緇衣(くはいしい)

楊朱の弟である楊布が、白い着物を着て出かけた。 雨が降ってきたので、白い着物を黒い着物に着替えて、家に帰って来た。 家の犬は、白かった筈の飼い主が黒くなって帰ってきたので、怪しんで吠えかかった。 楊布は怒って、犬を叩こうとすると、兄の楊朱が、…

『国語』 生産性ということ

英語でいえば、コストパフォーマンスである。 投入した資源に対して、どれだけ成果をあげることができるのか、ということである。 10人で100の仕事をしていた場合、100が150になっても、8人で100の仕事ができるようになっても、生産性は向上…

『韓非子』 「恩知らず」とは言うものの・・

マキアヴェッリだっただろうか・・・。 臣下が「あなたのためには命を捧げます」という時は、命の危険にさらされていない場合である、と書いたのは。 ビジネスの世界でも、 「あなたに付いていきます」という言い方がある。 僕も、何度か言われたことがある…

『韓非子』 まずはミスショットを減らす

優れたリーダーは、メンバーをモチベートし、同じ方向へと導く。 しかし、そのようなリーダーは滅多にいないし、また、滅多になれるものでもない。 「上司留守、明るい職場で絶好調」というサラリーマン川柳があるように、現実に多いのは、メンバーのやる気…

『孔子家語』 子供の言い訳

ある時、「大阪人はケチだ」と言った人がいた。 そうすると、そこにいた一人が、「そんなことはない。東京の人間だってケチだ」と言い返したことがあった。 これは反論にはならない。 反論したいのであれば、大阪人がケチではない証拠を挙げるべきであり、東…

『孔子家語』 5つの不吉なこと

ざくっとした感覚ではあるが、西洋でも東洋でも、古代の方が合理的である。 近世、近代になるにつれ、人間は非合理になっていくような気がする。 古代の人である孔子は、「風水」などといった妖しげなことは、言わない。 東に建て増そうが、西に増築しようが…

『老子』 マネジメントとは何か

一時期、フランスの経済学者トマ・ピケティ博士の著書『21世紀の資本』が評判であった。 題名からして、なかなかに挑戦的である。 カール・マルクスの有名な『資本論』は、原題をそのまま訳すと『資本』である。 ピケティ博士は、マルクス向こうを張った題名…

『管子』 あいつは良い奴だから昇進させよう

経営者は、三つのことをしっかりと視ておかなければならない、という。 一つは、地位の高い者が、その地位にふさわしい徳(人間性)を持っているのか。 二つは、業績を挙げた人間に、その業績にふさわしい報酬を与えているのか。 三つは、能力や適性に見合っ…

『列子』 自然の凄さ

好きな話の一つである。 玉を細工して、楮(こうぞ)の葉を作る人がいた。 三年を費やして完成すると、細かな毛や微妙な形まで本物そっくりで、実際の楮の葉の中に混じると、見分けがつかなかった、という。 この人は、ついにその匠の技で、宋の国に雇用され…

『論語』 転職しなかった人

こんな会社は辞めてやる、誰でも、一度や二度は考えたことがあるだろう。 そして、実際に辞める人、辞めない人がいる。 辞めて成功した人もいれば、失敗した人もいるし、辞めずにうまくいった人もいかなかった人もいるだろう。 柳下恵(りゅうかけい)という…

『孟子』 仁義と利益

論語の冒頭は、 「学びて時にこれを習う、またよろこばしからずや。朋(とも)あり、遠方より来る、また楽しからずや」 と、実に淡々と始まる。 これに比べると、『孟子』の冒頭は劇的である。 それは、梁の恵王という君主との謁見から始まる。 恵王は、孟子…

『箸休め』 起きて半畳寝て一畳

若いころは大きな家が欲しいと思っていた。 住宅展示場で見る広いリビングには随分と憧れたものである。 そして、それなりの家にも住んできたが、最近では家は小さい方がいいなと思うようになった。 その理由の一つとして、数年ほど前に、上野の東京国立博物…

『韓非子』 人をどこまで信じればいいのか

韓非子とマキアヴェッリは、よく似ている。 社会が乱れ、裏切りや陰謀が渦巻くようになると、こういった考え方をせざるを得ないのだろう。 韓非子は言う。 君主は、人を信じてはならない、と。信じることが、身を滅ぼす原因となる。 人を信じれば、人によっ…

『蒙求』仁君の条件

当意即妙の受け応えが素晴らしい話である。 魏の文侯が家臣たちと歓談していた時、 「ところで、私は君主としてどうだろう?」 と尋ねた。 あまり良い質問とはいえない。 真の明君ならこんなことは訊ねないだろう。 家臣たちは、本心は別として、次々と、 「…

『論語』 コストと収益のバランスを考える

全ての生き物は、コストと収益のバランスの上に成り立っている。 コスト以上の収益が得られなければ、生き物は死滅するしかない。企業でいえば、潰れるしかない。 このコストと収益を組み合わせることによって、三つの方策が考えられる。 一つは、どれだけコ…

『孟子』年金制度を考える

鰥夫(おとこやもめ)、寡婦(やもめ)、独者(ひとりもの)、孤児(みなしご)、という4者は、支えてくれない家族を持たない人たちである。 彼らを助けるのが政治だと、孟子は言う。 古代の聖王である文王は、必ず彼らのことを優先したというのである。 今…

『世説新語』 善を褒めるのが本当の善である

臣父淸畏人知、臣淸畏人不知(徳行 世説新語) 臣の父の清は、人に知られることを畏れ、臣の清は、人に知られざることを畏る。 本当の聖人であれば、人の評価などは気にしないであろう。 しかし、普通の人間は、そうではない。 やはり、尊敬されたり、信頼さ…

『列子』 情けは人のためらなず

「情けは人のためならず」という言葉があるように、最終的には自分の利益が大切である。 利益が目的であり、人に敬意を払ったり親切にしたりすることは、手段かもしれない。 しかし、手段は大切である。 手段を間違うと、結局、利益を手にすることはできない…

『荘子』愚の骨頂

自分の影を畏れ、足跡を嫌がって、これから離れようとした者がいた。 ところが、一生懸命足を持ち上げれば持ち上げるほど足跡は多くなり、どんなに早く走っても影は離れなかった。 その者は、これはまだ走り方が遅いのだと考えた。 そこで、さらにさらにと早…