天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

列子

『列子』 狗吠緇衣(くはいしい)

楊朱の弟である楊布が、白い着物を着て出かけた。 雨が降ってきたので、白い着物を黒い着物に着替えて、家に帰って来た。 家の犬は、白かった筈の飼い主が黒くなって帰ってきたので、怪しんで吠えかかった。 楊布は怒って、犬を叩こうとすると、兄の楊朱が、…

『列子』 自然の凄さ

好きな話の一つである。 玉を細工して、楮(こうぞ)の葉を作る人がいた。 三年を費やして完成すると、細かな毛や微妙な形まで本物そっくりで、実際の楮の葉の中に混じると、見分けがつかなかった、という。 この人は、ついにその匠の技で、宋の国に雇用され…

『列子』 情けは人のためらなず

「情けは人のためならず」という言葉があるように、最終的には自分の利益が大切である。 利益が目的であり、人に敬意を払ったり親切にしたりすることは、手段かもしれない。 しかし、手段は大切である。 手段を間違うと、結局、利益を手にすることはできない…

『列子』 忘坐

忘坐を逆にした「坐忘」というと、『荘子』内篇大宋師第六にある、孔子と顔囘の有名な話である。 しかし、ここで紹介するのは「忘坐」という話である。 宋の陽里にいた華子という人が、何でも忘れてしまうという病に罹った。 朝のことは夕方には忘れ、夕方の…

『列子』 休みたいとか遊びたいとか

子貢「先生、勉強ばかりで少々疲れてきました。しばらく休みたいのですが・・」 孔子「生きている間、休むなどということは出来ない」 子貢「それでは、私はいつまでたっても休めないのですか?」 孔子「休めるよ。あの墓を見てごらん。死んで墓に入れば休む…

『列子』 メラビアンの法則

心理学者のメラビアンによると、人の感情は、「態度や表情」「話し方」「話の内容」の三つで他者に伝わるという。 そして、伝わる感情の全体を100%とした時、「態度や表情」が55%、「話し方」が38%、「話の内容」は7%に過ぎないらしい。 要は、人の気持…

『列子』 類に貴賤なし

日本人は、宗教的にいい加減な民族だと批判されることがある。 生まれたならお宮参りで神社に行き、教会で結婚式を挙げ、死んだら仏になるなんて話を聴けば、敬虔なキリスト教信者といった立場の人からすれば、許し難いほどいい加減かもしれない。 しかし、…

『列子』 人は自分の見たいように世の中を見る

人は、何らかの現象を見たとき、その理由を考える生き物である。どうして、そうなっているのだろうと考え、解釈し、納得する。 例えば、ある金持ちを見た時、きっと一生懸命働いたから金持ちなんだろう、と考える。人によっては、きっと悪いことをしたから金…