天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『論語』 転職しなかった人

こんな会社は辞めてやる、誰でも、一度や二度は考えたことがあるだろう。

そして、実際に辞める人、辞めない人がいる。

 

辞めて成功した人もいれば、失敗した人もいるし、辞めずにうまくいった人もいかなかった人もいるだろう。

 

柳下恵(りゅうかけい)という、古典の中では有名な人がいる。

 

魯の国で、法を司る仕事、今でいえば検事か裁判官のような仕事に就いた。

しかし、清廉な人柄であり、敬遠されて左遷された。

 

しかし、またその職に任命され、また左遷された。

結局、三度も任命されては左遷された。

 

ある人が、

「いい加減、魯の国に仕えるのは辞めたらどうか」

と言うと、こう答えた。

 

今の時代、正しいことをすれば、どこの国に行って仕えても左遷されるでしょう。

魯で仕えようと他国で仕えようと同じことでしょう。

 

もし、左遷を畏れて正しいことをしないのであれば、故郷の魯で仕えていた方がましです。わざわざ他国に行くこともないでしょう、と。

 

 

出典 (明治書院)新釈漢文大系1 『論語』 402頁

微子第十八

柳下惠爲士師、三黜。人曰、子未可以去乎。

曰、直道而事人、焉往而不三黜。

枉道而事人、何必去父母之邦。

 

柳下惠(りうかけい)、士師と爲りて、三たび黜(しりぞ)けらる。

人曰く、子、未だ以て去る可からざるかと。

曰く、道を直くして人に事(つか)ふれば、焉(いづ)くに往くとして三黜(さんちゅつ)せられざらん。

道を枉(ま)げて人に事ふれば、何ぞ必ずしも父母の邦を去らんと。

 

 


自分磨きランキング

 

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 東洋思想へ
にほんブログ村