天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『老子』 マネジメントとは何か

一時期、フランスの経済学者トマ・ピケティ博士の著書『21世紀の資本』が評判であった。

題名からして、なかなかに挑戦的である。

 

カール・マルクスの有名な『資本論』は、原題をそのまま訳すと『資本』である。

ピケティ博士は、マルクス向こうを張った題名を付けたわけである。

 

『資本』という題名を『資本論』にしたのであれば、何故、『21世紀の資本論』という題名にしなかったのであろうか・・・・。

その方が、本の位置づけも明確になるのではないかと、僕は思う。

 

ところで、ピケティ博士が言っていることは、「格差の問題」である。

このことを、データで実証的に示したことが、博士の大きな功績らしい。

 

東洋の古典は、この実証ということが苦手であり弱点であるが、物事の本質を端的に示すことは得意である。

 

老子』によると、

 

弓に弦をはるときに、上の部分は下に抑えて、下の部分は上に挙げようとする。

理屈に合った行いであり、天の道とは、そのように理屈にあったものである。

 

それは例えば、雨が窪みにたまれば、溢れて低い所に流れ出すようなものである。

天は、多い部分を減らして、少ない部分を多くする。

 

ところが、人の世は違う。

少ない部分はさらに減らして、多い部分をさらに多くする。

 

つまり、金持ちに金は集まり、貧乏人はさらに貧乏になる。

格差ができるのは、人の世の常だということである。

 

そして、金持ちがその財産を社会のために役立てようとすることは、稀なことであり、これが出来るのは、有道者のみである。

 

有道者のみ出来るということは、政治としてマネジメントとして行う以外に方法はないということである。

放置しているだけでは、改善できないということである。

 

格差の問題は、政治の問題であり、社会の問題であり、組織の問題であり、人としての行き方の問題でもある。

何故なら、公平さや公正さといった正義の問題ともかかわってくるからである。

 

政治においても企業経営においても、マネジメントには正義が必要であろう。

 

出典 新釈漢文大系『老子 荘子 上』125頁

天道第七十七

天之道其猶張弓乎。高者抑之、下者擧之。天之道損有餘而補不足。人之道則不然。損不足以奉有餘。孰能有餘以奉天下。唯有道者。

 

天の道は、其(そ)れ猶(な)ほ弓を張るがごときか。

高き者は之を抑へ、下(ひく)き者は之を擧(あ)ぐ。

天の道は、餘(あまり)有るを損(へら)して、足らざるを補ふ。

人の道は則ち然(しか)らず。足らざるを損(へら)して以て餘(あまり)有るに奉ず。

孰(たれ)か能く餘(あまり)有り以て天下に奉ぜん。唯(ただ)有道者のみ。

 

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