『韓非子』 まずはミスショットを減らす
優れたリーダーは、メンバーをモチベートし、同じ方向へと導く。
しかし、そのようなリーダーは滅多にいないし、また、滅多になれるものでもない。
「上司留守、明るい職場で絶好調」というサラリーマン川柳があるように、現実に多いのは、メンバーのやる気を阻害し、チームをバラバラにしてしまうリーダーである。
そう考えると、リーダーとしての最低条件は、少なくともメンバーの仕事の邪魔をしないということになるのかもしれない。
最高のリーダーになるのは難しいが、メンバーの邪魔をしないリーダーであれば、不可能ではなさそうである。
考えてみれば、人をモチベートしようとか、一つの方向に導こうといった考え方自体、傲慢かもしれない。
多くの管理職や経営者を見ると、理想のリーダーを目指そうとするあまり、かえってメンバーやチームを駄目にしてしまっているのではと、思うことも多い。
ゴルフでいえば、ナイスショットを求めるあまり、力んでしまってミスショットをしてしまうようなものである。
ゴルフのスコアは、ナイスショットで決まるというよりも、ミスショットを、それも取り返しのつかないようなミスショットをどれだけしないかに、かかっている。
どんな凄いプロであっても、全てのショットがナイスショットという訳にはいかないからである。
アマチュアであれば、尚更である。
まずはOBを打たない。極端に右や左に曲げない。池に入れない。林に打ち込まない。
これらが出来れば、ナイスショットといわれるものが一打も無くても、かなり良いスコアになるであろう。
また、ミスショットを少なくする努力の積み重ねが、ナイスショットを生む筈である。
尊敬される素晴らしいリーダーを目指そうと空回りをするよりも、まずは馬鹿にされないリーダーを目指すことが大事であろう。
一言で馬鹿にされないとはいうが、ゴルフのミスショットを少なく、と同じように、これも決して簡単なことではないのだから。
出典(明治書院)新釈漢文大系11『韓非子 上』竹内照夫著 318頁
説林下第二十三
伯樂敎其所憎者相千里之馬、敎其所愛者相駑馬。千里之馬時一、其利緩、駑馬日售、其利急。此周書所謂下言而上用者也。
伯樂(はくらう、もしくは、はくらく。古代の馬の鑑定の名人。博労や馬喰はこれが由来)、其の憎む所の者に千里之馬を相するを敎へ、其の愛する所の者に駑馬を相するを敎ふ。千里の馬は時に一あるのみにして、其の利は緩く、駑馬は日に售(う)れて、其の利は急なればなり。此れ周書に所謂(いはゆる)下にして上用する者なり。