天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『淮南子』 理想の上司とは

立派な上司というものは、部下に全てを求めない。

 

人格、能力、技術、知識、自分自身がそれら全てを備えていたとしても、部下に同じことを求めようとはしない。

 

ところが、実際は、部下の無能、無気力、節度の無さを嘆く上司は多い。

しかし、考えてみれば、部下に全てが備わっているならば、そもそも上司は必要ない。

 

また、立派な上司は、自分自身は理想の人格を追求するが、部下にまで、そのことを求めない。

部下に求めるのは、まず普通に努力すれば出来る内容である。

 

確かに、理想の人格を有する部下がいたならば、その人は、部下ではなく、自分の上司になるだろう。

 

部下の無能さを嘆く上司は、たまたま部下が無能だったおかげで上司になれただけのことである。

それは、自分自身が立派で優秀であることの証明にはならない。

 

自分が立派でもなく優秀でもないことに気づいた時、始めて理想的な上司への道が開けるだろう。

 

 

 

出典 (明治書院)新釈漢文大系55 『淮南子 中』楠山春樹著 733頁

巻十三 氾論訓

 

君子不責備於一人。方正而不以割、廉直而不以切、博通而不以訾、文武而不以責。求於人、則任以人力、自脩則以道徳。責人以人力、易償也、自脩以道徳、難爲也。難爲則行高、易償則求贍矣。

 

君子は備はることを一人に責めず。方正なれども以て割かず、廉直なれども以て切らず、博通なれども以て訾(そし)らず、文武なれども以て責めず。

人に求むるには、則ち任ずるに人力を以てし、自ら脩(をさ)むるには則ち道徳を以てす。人に責むるに人力を以てするは、償(つぐな)ひ易きなり、自ら脩(おさ)むるに道徳を以てするは、爲し難きなり。

爲し難ければ則ち行高く、償ひ易ければ則ち求め贍(た)る。

 

 

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