読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『韓非子』 第一線の重要性

良い商品を作り、適切な価格設定をし、サービスも充実させ、広告宣伝をしても、ビジネスがうまくいかないという話である。

 

ある酒屋がいた。

良い酒を造り、正直に客に接し、幟も高く立てているのに、全く酒が売れないのである。

 

折角の美酒は、いつも酢になってしまっていた。

 

そこで、先輩に相談すると、お前のところの犬は猛犬だろうと言う。

何故、猛犬が問題になるのですかと訊くと、

 

「お客さんが怖がって寄り付かないからだ。例えば、子供に金を持たせて酒を買いに行かせても、犬が待ち構えて噛みついてしまう。それでは、酒は売れない」

 

経営者やリーダーがやっきになって頑張っても、実際に顧客に接する部下が猛犬になってしまっていては、ビジネスはうまくいかない。

 

第一線の社員が、現場の様々な問題を上に伝えようとしても、側近たちが遮断してしまえば、トップは本当のことを知ることができない。

 

今も昔も変わらない問題の一つである。

 

出典 (明治書院)新釈漢文大系12『韓非子 下』竹内照夫著 569頁

外儲説右上第三十四

 

宋人有酤酒者。升概甚平、遇客甚謹、爲酒甚美、縣幟甚高著。然不售、酒酸。怪其故、問其所知里長者楊倩。倩曰、汝狗猛耶。曰、狗猛則酒何故而不售。曰、人畏焉、或令孺子懐錢、挈壺甕而往酤、而狗迓而齕之、此酒所以酸而不售也。

 

宋人、酒を酤(う)る者有。升概(しょうがい、升で公正に量ること)甚だ平かに、客を遇すること甚だ謹み、酒を爲(つく)ること甚だ美に、幟を縣くること甚だ高く著はる。然(しか)るに售(う)れずして、酒、酸す。其の故を怪しみ、其の知る所の里の長者楊倩(ようせん、人名)に問ふ。倩曰く、汝が狗猛きか、と。曰く、狗猛ければ則ち酒何の故に售れざる、と。曰く、人焉(これ)を畏るればなり、或は孺子をして錢を懐にして、壺甕(こおう、壺のこと)を挈(ひっさ)げて往きて酤(か)はしめむに、狗迓(むか)へて之を齕(か)まむ、此れ酒の酸するまで售(う)れざる所以なり、と。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村