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天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『孟子』「責任転嫁するな!」と言って責任転嫁するのは良くないだろう

人は、悪いことの原因を自分には求めない生き物である。

業績の振るわない会社で、第一線の社員に話を聴くと、
「私たちは一生懸命やっているが、うちの会社は上が馬鹿で・・・・」と言う。
それではと、経営トップに話を聴くと、
「夜も眠れないくらいに戦略や方針を考えているが、下の人間が動かない」と言う。
課長、部長といった中間管理職に話を聴くと、
「いくら頑張っても、この会社は上も馬鹿だが、下の連中もどうしようもなくてうまくいかない」と言う。
外から観察すれば、上から下まで全部が駄目だということが、良く分かる。

ただ、責任というものは権限に比例するものである。であるならば、諸悪の根源はトップだということになる。ところが、そのことに気づいていないトップは、古来から沢山いた。

下に挙げた孟子の話を現代を置き換えると、
社長に対して、
「一般社員がきちんと働いていないのは誰の責任ですか?」
社長「もちろん、マネージャーが悪い」

「課長がきちんと部下を働かせてないのは誰の責任ですか?」
社長「もちろん、部長がダメだからだ」

「部長が悪いのは誰の責任ですか?」
社長「もちろん、役員がだらしないからだ」

「では、役員が駄目なのは誰の責任ですか?」
社長「・・・・・・時間もないから、この話はまたにしよう」

「自分たち(管理職や一般社員)が悪いのに、会社や市場の所為にばかりしている。他責ばかりで自責がない」と嘆く経営者は多いが、その言葉自体が、他責の言葉である。

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出典 (明治書院)新釈漢文大系4『孟子』内野熊一郎著63頁
「梁恵王章句下」
孟子謂齊宣王曰、王之臣、有託其妻子於其友、而之楚遊者、比其反也、則凍餒其妻子、則如之何。王曰、棄之。曰、士師不能治士、則如之何。王曰、已之。曰、四境之内不治、則如之何。王顧左右言他。
孟子、齊の宣王に謂ひて曰く、王の臣、其の妻子を其の友に託して、而して楚に之きて遊ぶ者有らんに、其の反るに比(およ)んでや、則ち其の妻子を凍餒(とうたい:餓え凍えること)せば、則ち之を如何せん、と。王曰く、之を棄てん、と。曰く、士師、士を治むること能はずんば、則ち之を如何せん、と。王曰く、之を已めん、と。曰く、四境の内(国内のこと)治まずんば、則ち之を如何せん、と。王、左右を顧みて他を言う。

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