『世説新語』 なぜ、部下から意見が出ないのだろうか?
東晋の時代、劉簡という人がいた。剛直な人柄であった。
ある時、意見を求められたが、何も答えなかった。
上司である桓宣武(桓温)が、
「何故、意見を言わないのか」
と、問うた。
それに対して、劉簡は、一言、答えた。
「言っても、採用されないことが分かりきっているからです」
社長「わが社はイエスマンばかりで困ったもんだ」
社員「お言葉ですが、社長・・・・」
社長「うるさい!口出しするな!」
社長「もっと画期的なアイデアはないのか?」
社員「この計画はどうでしょうか?」
社長「なるほど、ところで、この計画に前例はあるのかね?」
昔も今も、社員が意見を言わないのは、社員の所為ではない。
出典(明治書院)新釈漢文大系77『世説新語 中』目加田誠著 418頁方正第五
劉簡作桓宣武別駕、後爲東曹參軍。頗以剛直見疎。
嘗聽訊、簡都無言。
宣武問、劉東曹何以不下意。
答曰、會不能用。宣武亦無怪色。
劉簡、桓宣武の別駕と作(な)り、後に東曹參軍と爲る。
頗(すこぶ)る剛直を以て疎(うと)んぜらる。
嘗て聽訊(ちやうじん)せらるるも、簡、都(すべ)て言無し。
宣武、問ふ、劉東曹、何を以て意を下さざる、と。
答へて曰く、會(かなら)ず用ふること能はざらん、と。宣武も亦怪しむ色無し。