天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『荘子』 大泥棒に学ぶ理想的なリーダーの姿

日本で大泥棒といえば、石川五右衛門だが、古代中国では、盜跖(とうせき)である。

ある時、子分が盜跖に尋ねた。
「泥棒にも道というものがあるのでしょうか」

盜跖は答えた。
「当り前だ。何をするにしても道が無いということは無い」
そして、続けて言うには、

盗もうとする部屋に何があるのかを当てるのが、聖だ。
入る時に先頭に立つのが、勇だ。
出る時にしんがりを務めるのが、義だ。
うまくいくかどうかを見分けるのが、知だ。
分け前を公平に分配するのが。仁だ。

この、聖・勇・義・知・仁の五つを備えることなく、大泥棒になれた者は誰もいない、と。

現代風にいえば、
1、 先見性
2、 率先垂範
3、 部下の保護
4、 洞察力
5、 公正・公平
といった所であろう。

 

人間に関する知恵は、貴賤を問わず共通してる。

近代や現代のマネジメント理論で一見新しいそうなものも、三千年前には既に述べられている。

 


出典 (明治書院)新釈漢文大系8 『荘子 下』 市川安司遠藤哲夫著 331頁
外篇胠篋(きょきょう)第十

故、跖之徒問於跖曰、盜亦有道乎。跖曰、何適而無有道邪。夫妄意室中之藏、聖也。入先、勇也。出後、義也。知可否、知也。分均、仁也。五者不備而能成大盜者、天下未之有也。

故(むかし)、跖の徒、跖に問ひて曰く、盜にも亦(また)道有るか、と。
跖曰く、何(いず)くに適(ゆ)くとして道有ること無からん。夫れ妄(みだ)りに室中之藏を意(おも)ふは、聖なり。入るときに先んずるは、勇なり。出づるとき後るるは、義なり。可否を知るは、知なり。分つこと均(ひと)しきは、仁なり。
五者備はらずして能く大盜を成す者は、天下に未だ之有らざるなり、と。

 


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