天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『孔子家語』 実るほどこうべを垂れる稲穂かな

傲慢学会なるものが、イギリスにあるらしい。
経営トップの傲慢は大きなリスクであり、権力の座に長くいることにより性格が変わるのは、人格障害の一種で「傲慢症候群」だと、書かれている。

トップの傲慢さが大きなリスクだというのは、当たり前のことで、何を今更という気がする。
権力の座に長くいることで、性格が変わるのが病気だとすれば、ほぼ100%の人が病気だろう。
偉くなれば傲慢になるのは、人の常である。
であるから、東洋では常にこのことを戒めてきた。

「慎重にすること、腐った縄で暴れ馬を御するようにせよ」

子路が、孔子に民を治める方法について質問した時の、孔子の答えである。

単なる馬ではなく暴れ馬を、さらに、ただの縄ではなく腐った縄で御するくらい、慎重にしなければならない、というのである。
「何故、そこまで慎重さが必要なのか」という疑問を、子路は投げかけた。
それに對して、孔子は、
「相手は人間である。きちんと導けば家畜のようにおとなしく従ってくれる。しかし、一歩間違うと、仇のように逆らうようになる。どんなに慎重にしても、し過ぎるということはない」、と述べた。

傲慢の極である暴君や独裁者は、大体が民衆によって滅ぼされ。世界や我が国を観るに、気を付けなければいけない人が、最近どうも多いようである。


出典 新釈漢文大系『孔子家語』112頁 巻第二 観思第八
子貢問治民於孔子。子曰、
凛凛焉、若持腐索御扞馬。
子貢曰、何其畏也。孔子曰、
夫通達之屬皆人也。以道導之、則吾畜也。不以道導之、則讎也。如之何其無畏也。

子貢(しこう)、民を治むるを孔子に問ふ。子曰、
凛凛(りんりん)たること、腐ちたる索(なは)を持して扞馬(かんば)を御するが若(ごと)くす、と。
子貢曰く、何(ぞ)其れ畏るるや、と。孔子曰く、
夫(そ)れ、通達の屬(ぞく)、みな人なり。道を以て之を導かば、則ち吾が畜なり。
道を以て之を導かざれば、則ち讎(あだ)あり。
之を如何(いかん)ぞ、其れ畏るる無からんや、と。

 

 


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