天下の小論

其の詩を頌し、其の書を読み、其の世を論ず 東洋古典の箚記集です

『晏子春秋』 差別用語は誰が決めたんだろう

上に立つ者が、
「私は偉いんだ。お前らとは違うんだ」というオーラを出されると、部下たちは何も言えなくなってしまう。

これを、部下が瘖(音読み「いん」、英語「dumb」)になるという。
部下が瘖になれば、上司は何も聞くことができない。
これを、上司が聾(音読み「ろう」、英語「deaf」)になるという。

組織の構成員が聾瘖(deaf and dumb)では、物事がうまく行く筈がない。不祥事が生ずる会社や組織は、間違いなくこうなっている。

ところで、「聾」と「瘖」の訓読みは、誰が決めたのか知らないが差別用語となっている。

であるから、ネットの辞書で英語の「deaf」「dumb」を調べても、訓読みは出てこない。

これは言葉を抹殺したということだろう。

 

ついでに、死に体になった政治家などを指す言葉である「lameduck(レイムダック)」をネットの英和辞典で調べると、「役に立たない人間、ダメな人間」といった訳が出てきた。

これは正しい訳とは言えないだろう。

lame」とは「跛」のことである。「lameduck」とは「跛のあひる」であり、そこから「役に立たない」という意味が出てきた。

 

どこかの誰かが差別用語などというものを決め、差別用語を使う人間は人を差別する人間だという様な風潮を作り出している。

私としては「瘖」になるしかないのである。

 


出典 新編漢文選9『晏子春秋 上』谷中信一著187頁
内編諫下第二 景公朝居嚴下不言晏子諫 第十七

晏子朝、復于景公曰、「朝居嚴乎。」公曰、「嚴居朝、則曷害于治國家哉。」晏子對曰、「朝居嚴則下無言、下無言則上無聞矣。下無言則吾謂之瘖、上無聞則吾謂之聾。聾瘖、非害國家而如何也。

晏子朝し、景公に復(まを)して曰く、「朝居すること嚴なるか」と。公曰く、「嚴に朝に居れば、則ち曷(なん)ぞ國家を治むるに害あらんや」と。晏子對へて曰く、「朝居すること嚴なれば則ち下言ふこと無く、下言ふこと無ければ則ち上聞くこと無し。下言ふこと無ければ則ち吾之を瘖(いん)と謂ひ、上聞くこと無ければ則ち吾之を聾と謂ふ。聾瘖(ろういん)は國家を害するに非ずして如何(いかん)ぞや。

 

 


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