『論語』 転職しなかった人
こんな会社は辞めてやる、誰でも、一度や二度は考えたことがあるだろう。
そして、実際に辞める人、辞めない人がいる。
辞めて成功した人もいれば、失敗した人もいるし、辞めずにうまくいった人もいかなかった人もいるだろう。
柳下恵(りゅうかけい)という、古典の中では有名な人がいる。
魯の国で、法を司る仕事、今でいえば検事か裁判官のような仕事に就いた。
しかし、清廉な人柄であり、敬遠されて左遷された。
しかし、またその職に任命され、また左遷された。
結局、三度も任命されては左遷された。
ある人が、
「いい加減、魯の国に仕えるのは辞めたらどうか」
と言うと、こう答えた。
今の時代、正しいことをすれば、どこの国に行って仕えても左遷されるでしょう。
魯で仕えようと他国で仕えようと同じことでしょう。
もし、左遷を畏れて正しいことをしないのであれば、故郷の魯で仕えていた方がましです。わざわざ他国に行くこともないでしょう、と。
微子第十八
柳下惠爲士師、三黜。人曰、子未可以去乎。
曰、直道而事人、焉往而不三黜。
枉道而事人、何必去父母之邦。
柳下惠(りうかけい)、士師と爲りて、三たび黜(しりぞ)けらる。
人曰く、子、未だ以て去る可からざるかと。
曰く、道を直くして人に事(つか)ふれば、焉(いづ)くに往くとして三黜(さんちゅつ)せられざらん。
道を枉(ま)げて人に事ふれば、何ぞ必ずしも父母の邦を去らんと。