『孟子』 人に頭を下げるのではなく金に頭を下げる
明治の初め、武士の商法という言葉があったように、武士はその誇りからか他人に頭を下げることが出来なかった。
もちろん、これでは商売が出来ない。
三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎は、こういった元武士たちに、
「人に頭を下げるのではなく、金に頭を下げるのだ」
と教えたという。
『孟子』にも、
「他人に対して、かしこまって諂(へつら)い笑うことは、夏に農作業をするよりも大変だ。 同じ意見でもないのに、お説ごもっともと迎合するときには、恥ずかしさのあまり顔色が赤くなってしまう」
とある。
しかし、他人に頭を下げるのではなく、金に頭を下げるという考え方は好きにはなれない。より卑しい気持ちがしてしまう。
人と金を比較したとき、どちらの方が尊いのだろう。岩崎の考え方からすれば、金の方が尊いということになるのではないだろうか。
岩崎弥太郎は土佐の出身である。私も同じ郷里であるが、あまり好きではない。
三菱グループの中には、もはや岩崎の思想は残ってないとは思う。しかし、何となく微妙な空気を感じてしまう。
出典(新釈漢文大系)『孟子』内野熊一郎著220頁滕文公章句下
脅肩諂笑、病于夏畦。
未同而言。觀其色、赧赧然。
肩を脅(そびや)かし諂ひ笑ふは、夏畦(かけい)よりも病(つか)る。
未だ同じからずして言う。其の色を觀るに、赧赧然(たんたんぜん)たり。